あかぱんつの人形の中で最も古い人形「みるくちゃん」。人形劇団創立時に最初に作った人形で、それからずっと今も登場しているマスコット的な人形です。途中一度だけまったく新しく作り替えてからでも20年ぐらいたったでしょうか。
この人形ですが、頭部がスポンジ(ウレタンフォーム)でできているので、手で縮めると圧縮されて顔の表情がくしゃんとつぶれます。それが怒った顔にみえ、離すと元通りになる仕掛け。顔の表情が劇的に変化するのがウリの人形です。
ですが、スポンジの弾力に頼る構造なので、戻りが弱くなったり、スポンジが摩耗したりして時間と共に劣化していく運命なのだ。あ~、そうなると修理するよりほかありません。
で、とうとうそのめんどくさい修理をせねばならなくなったのでした。
その1.顔の表面に使う生地を染める
あらかじめ、鍋に伸び縮みする白いタオル地(パイル)を水洗いして入れときます。一方、布を染める粉末染料(ダイロン)を水でとかしてだいたいの色を作っておき、鍋のパイル生地にすこーしずつ注いでいきます。ガスは点火したまま。
色味は、染めた布を乾かすと薄くなるので、希望の色より濃いめにするんですが、これがなかなか。どこまで濃かったらいいんでしょう? 薄くなってしまったらまた染料を追加して染め直しだし。濃すぎたら洗い落とすわけだけど、落ちなかったらボツにして振り出しに戻るだし。
人形の顔を見つめつつ、今度はこれより濃いでオレンジ色がかった元気な感じにしたいんだが、と欲ばってるんだけど。はたしてどうなるんでしょう?
染め上がりました。まあまあかなあ。経年劣化もするんで、もうちょっと濃いほうがいいかもなんだが。まあ、いいでしょう。
その2.細工がしやすいように解体
喉のところが痛んでいるので、ごっそり外すことにします。
また、顔の表面も張り替えるので、鼻や目などの造作も取り外しました。
古い顔の表面の布をはがすと、あら、もう一枚、まだ布が貼ってありました。何度も修理してるのでこうなっちゃうんだよなあ。
この一番下の生地はこのままいかすことにしました。その下のウレタンもまだ丈夫だったので、くっつけたままのほうが補強にもなるだろうと思いまして。
その3.手を入れるところを作る
口をパクパク開閉させるのと、くしゃんとスポンジを握りしめるための構造です。
しっかりした生地に指が収まるようにした綿入りのサックを装着。
横からみるとこんな感じです。
「われながらうまく考えたぜー」、と思ったのですが、これは失敗でした。指をいれるところを作りすぎました。実際にやってみると、こんなにたくさんの指を一瞬で出し入れすることはできないのです。数を減らし、指1本だけはいる作りにしました。これなら、さっと入れて、さっと外すことができそう。ふう…。
その4.指を入れる装置を頭部につける
上記の布を上顎の部分に貼り付け、残りの生地を目玉のあたりから引き出しました。
引き出した布は顔面に固定。なお、上顎の布地は、口の中のえんじ色の皮の内側にたこ糸で固定しています。喉の奥に手がチラッと見えちゃってますけど。
このままじゃあ生の手が見えてしまいますんで、表面を白い布でおおいました。
その5.
顔の表面のしあげ
染めた顔の布を縫い付け、目鼻もとじつけ、口の中にも布をつけておしまい。
完成は、こんなです。
リボンや髪型も若干手直ししました。以前のみるくちゃんと並べてみます。
ど、どんなもんでしょうかねえ?
えー、「前のほうがよかった」とか「前のほうがかわいかった」とかのご注文は、今から作り直すのは至難の業(そもそも元に戻せない)ですんでお受けいたしかねます。どうかご了承くださいませ。
それでも、まだお心残りがおありでしたら、こちらの顔でごかんべんを。
てなところで、「顔」の修理は終わりました。が、そうなると手と足の布地の汚れが目立ちますわなあ。んーもう、こちらも張り替えなくちゃですがな。やれやれ…